こんにちは、アクティングコーチ・演技トレーナーの山縣です。
演技のことは言葉だけで伝えることの難しさは重々理解しているところですが、少しでも演技初心者の方や、久しぶりに俳優業を再開する方などに役立ててもらえたらと考えています。
私のモットーとしては、ブレることはありません。
「日本の俳優のレベルを底上げする」
「演技ツールを一般の方に解放し人生に生かしてもらう」
さて、今回は台詞そのものについて考えてみたいと思います。
演技初心者、或いはプロでも台詞を文字通りにしか捉えていない方がいらっしゃいます。
それは人間理解を浅くしてしまう捉え方に他なりません。
あなただって、普段から本当のことばかり言葉にしている訳ではないはずです。
実は役だって同じなんです。
というところを発見するために、インナーモノローグを考えてみましょう。
インナーモノローグって言葉を聞いたことがありますでしょうか。
インナーモノローグとは、心の声、内面の声、といった意味になります。
色々な演技メソッドがある中で、このインナーモノローグを特に採用しているのが、イヴァナ・チャバック、ベラ・レーヌ・システムではないでしょうか。
このインナーモノローグは、その言葉そのものを頭で反芻しているかのような状況となりやすく、今を生きていない姿を晒してしまう可能性もあるため、私個人的にはインナーモノローグそのものを使用した演技は指導していません。
そんなことを言うと身も蓋もないですが・・・
しかしながら、俳優が目的を探るうえでとても雄弁に語ってくれるが、インナーモノローグだったりします。
目的を台詞化したと私は捉え直し、シンプルに使用する場合に有効と思っています。
私の演技クラスにおいては、台詞を理解する上で、またシンプルに目的達成に向かう上で、ちょっとした「magic if」として使用していますので、そのレッスン例を今回は公にしてみたいと思います。
また、台詞について、演技の目的や行動についてお伝えしている記事も是非ご参照ください。
演技で使用するインナーモノローグとはどんなこと?

アクティングコーチのイヴァナ・チャバックがこう定義しています。
「声に出さない、あなたの頭の中の台詞」
インナーモノローグはまさにその名の通り、心で思っている本心の独白。
また、声に出しては言えない本音。
台詞はそのままで、その台詞で何が言いたかったのかを文字に起こして、その内容の質量で台詞を言うことです。
例えば、ある役が恋人と口論の末、こんな台詞で部屋から出ていくシーンがあるとします。
さて、この台詞の本音をインナーモノローグで考えてみます。
台詞そのものは変わりませんが、中身の意味が変わるということになります。

お願いこっちみて、愛してるって言ってよ、絶対に私を離さないで止めて!
どうでしょうか?
台詞そのままの意味ではなかったのではないでしょうか。
「帰る!」と言いながら、実は止めて欲しいと思っていることだったりしますよね。
実は日常的に私たちは言葉通りでないことを発しながら、相手に感じて欲しいこと、思って欲しいことを発しているのです。
インナーモノローグを見ていくと、本心や暗に意味する内容が浮き彫りになってきますね。
メラビアンの法則から考える、台詞とコミュニケーションについて

次に台詞について科学的に紐解いてみたいと思います。
心理学的なお話しは多いですが、科学的なお話しは珍しいでしょうか。
メラビアンの法則とは、人と人がコミュニケーションを図る際、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%の割合で、相手に影響を与えるという心理学の法則です。
メラビアンの法則とは?【わかりやすく解説】第一印象、誤解
メラビアンは、人間は他人とコミュニケーションを取るとき、言語・聴覚・視覚の3つの情報から相手を判断している、と仮定しました。
情報が相手に与える影響は、
メラビアンの法則とは?【わかりやすく解説】第一印象、誤解
言語:7%
聴覚:38%
視覚:55%
これが「7-38-55ルール」です。
私が演技レッスンで言及する場合は、端数を取って分かりやすく「10-40-55ルール」としてお伝えします。
何が言いたいかといいますと、言語情報がたった7%しか影響を及ぼさないということなのです。
言語情報、つまり演技世界で言い換えると「台詞」です。
言語情報(台詞)よりも、私たちは聴覚(声の高低・大小など)、視覚(表情・態度など)の影響が大きいということ。
驚きましたでしょうか?
私が言いたいことは、台詞の内容が重要ではなく、どういう目的で俳優が台詞を言ったかが重要であるということに繋がるということ。
誤解しないように言いますが、だから声の高い低いや表情を使って話せ、と言っているわけではありません。
それをしてしまうと、形の演技、見せる演技、紋切り型の演技となってしまうからです。
インナーモノローグと目的を使った演技レッスン

これは私が演技クラスで実用している台詞や目的・動機・障害・行動を発見するための内容です。
一度体験して欲しいところです。
では、この台詞を言ってみてください。
「今、何時ですか?」

「これはどんな時に言いますか?」
と訊くと、その多くが
「時間を知りたいから」と答えます。
この「今、何時ですか?」をインナーモノローグで分量の多いと言葉にしてしまったら、演技が複雑になりませんか?
頭で考えてしまって目的に向かったリアリズムの演技が薄れてしまう可能性すらあります。
私はここでシンプルなインナーモノローグを使って、演技可能なヒントを探すために使用しています。
なぜなら、役が行動するための目的を発見する力があるからです。
それでは、たった「今、何時ですか?」だけの台詞ですが、以下3つのインナーモノローグから、役の目的や動機を探ってみたいと思います。
インナーモノローグ①

「今、何時ですか?」→「私は間に合いましたか?」というつもりで聞く。
例えば、あたなが、面接会場、またオーディション会場にギリギリで到着した場合、受付の方に開口一番「すみません」を言った後に吐いた台詞だとしたら?
目的は時間を確認するではなく、「急いで来たと思わせる」かもしれません。
その場合は、きっと一生懸命走ってきた、急いで来たといったという行動を取っているでしょう。
障害は、遅刻したら困る、人生に関わる、などでしょうか。
インナーモノローグ②

「今、何時ですか?」→「帰ってください」というつもりで聞く。
とある学校の教室、下校時間が過ぎても帰らない子どもたち。
そこであたなが先生だとしたら、そんなあなたがが生徒に言った台詞だとしたら?
目的は「帰らせる」、障害は「この後、大切な用事がある。遅れたくない。」といったことかもしれません。
インナーモノローグ③

「今、何時ですか?」→「あぁ、退屈だ。」というつもりで共感を得るために聞く。
あなたはとある受付係。
今日は朝からゲストが来ることもなく、雑用もほとんどない。
椅子に座ったままただただ過ぎていく時間を待っているだけ・・・。
仕事中でスマホもゲームもできない中、時々様子を見にきてくれる同僚に聞いたとしたら?
目的は「同情させる、共感させる」、障害は、「早く帰りたいのに帰れない」など。
動機は、何かしら仕事をもらう、立ち話をしてもらう、などがある。
或いは、インナーモノローグに以下を追加すると変わってきます。
「あぁ、退屈だ。この後ご飯一緒にどう?」
「あぁ、退屈だ。早く上がらせてくれない?」
この場合は、相手を誘うことが目的だったりしますので、障害は恥ずかしい、などが出てくるかもしれません。
どうでしょうか、想像が広がってきましたか?
まとめ

インナーモノローグは、目的を見つける際に有効な使い方ができます。
また、役の本質を掴むためにも有効だということです。
たとえば、「今、何時ですか?」の台詞に対して、あまり文章量の多いインナーモノローグを入れ込んでしまうと、その言葉を演じてしまい兼ねません。
私は、そこを危惧しています。
例えば、無言で目線だけで演技するような場合に、インナーモノローグが
「くそ、なんであいつこっち見てるんだ。気持ち悪いな、目を逸らそう。ってかもしかして、今日の服装、ダサかったかな?」
など、長い分量にしてしまうと、その流れを段取りで追ってしまいませんか?
映像の撮影で、無言のシーンの際にインナーモノローグを使用することも多いかもしれません。
しかしながら、何度かお伝えしていますが、心を動かす際に邪魔になるのは自意識や思考だったりします。
その思考・自意識を自ら作ってしまうことになってしまうと元の木阿弥。
そうならないよう、インナーモノローグは、シンプルにしていくことをお勧めします。
また、目的を考える際に、役の理解のために使用することを私はお勧めしているのです。
さて、今回はインナーモノローグについて説明しました。
是非、行動に結びつくように動機と合わせて、目的達成に向かっていけるものを見つけてくださいませ。
きっと、あなたの行動が変わります。
それはつまり、演技が変わるということです。






























バカじゃないの、人が心配しているのも知らないで、帰る!