五感の記憶(センソリー)を演技に使うってどういうこと?

五感の記憶(センソリー)を演技に使うってどういうこと?

こんにちは、演技トレーナーの山縣です。
演技のことは言葉だけで伝えることの難しさは重々理解しているところですが、少しでも演技初心者の方や、久しぶりに俳優業を再開する方などに役立ててもらえたらと考えています。

私のモットーとしては、ブレることはありません。
「日本の俳優のレベルを底上げする」
「演技ツールを一般の方に解放し人生に生かしてもらう」

さて、今回はメソッドアクティングでリラクゼーションの次に演技の革新をもたらした五感の記憶について言及します。

センソリー(sensory:感覚)とも言います。

五感が鋭敏な状態でいれば、対象や空気を感じることで、よりそこに居ることやそこに在るものがリアリティを帯びていくことになります。

例えるなら夏の撮影の中に冬を感じるため肌感覚から冬の寒さを感じていく、そんなことです。

この五感の記憶(センソリー)は、そう感じることを示すことや第三者に表す必要はなく、自分の感覚として感じらるかどうか、つまり自分の中にあるものが基準となります。

必要なのはリラックスと同時に、この注意の集中を感覚に向けるということです。
それでは見て行きましょう。

五感の記憶(センソリー)とは?

五感の記憶(センソリー)は、リー・ストラスバーグが研究を重ね広めていった演技ツールです。

ステラ・アドラーは、自分の記憶だけ使うなんて、と批判していたりします。
そんなステラ・アドラーが想像から演技をしていくことを広めていますが、その想像が「本当」と感じられる瞬間には、五感の記憶が潜んでいたり影響していることも忘れてはなりません。
ですので、よく論争されますが、どちらが正でどちらが悪ではなく、両方とも正なのです。

ゼン・ヒラノ氏、ミユキ・ヒラノ氏が進めていることから影響を受けていますので、こう説明しま。
五感の記憶(センソリー)は、自分の五感の記憶と役が体験することが、オーバーラップし融和する感覚のためのトレーニングと言えるのではないでしょうか。

トライした分だけ発見がある五感の記憶のトレーニングは、シーンの中で自分ごととして肌感覚で「実感の連続」をもたらせてくれるものと理解してもらえたらと思います。

結局のところ、私も試して演技に取り組んだり、指導してきた中で、言えることはトレーニングし続けていくことで、ある時ふとここに繋がっているのかと分かってくるということです。

五感の記憶(センソリー)が必要な時はどんな時?

近年は夏は猛暑の連続ですが、40℃近いが外は通勤だけで辛かったり、しんどかったりすることは想像に難くありません。

そんな仕事終わりにキンキンに冷えたジョッキの中に入った冷えたビールをグイッと飲み「う〜最高!」と言ったCMや1シーンがあったとします。

こういった撮影は早め早めになりますので、4月頃だったりします。
その段階で夏を肌で感じるにはどうしたらいいのでしょうか?
空調の効いたスタジオでやるにしても、舞台上でほどよい気温でやるにしても、猛暑の夏の中に居たことを体験する必要が出てきます。

そんな時に五感の記憶(センソリー)から暑さを追体験し、今その瞬間の実感に変えていくのです。また仕事の疲れも体験すると良いでしょう。
すると、その時、初めて、暑い日にビールを飲みたい欲求が現れるのです。
そして、そこでキンキンに冷えた生ビールを飲むと、自然に溢れる声が出てきます。

それがそのまま画面や舞台を通じてお客様に届くと、その欲求か爽快感など演者が感じた分だけ伝わっていくのです。

昭和と平成と令和と大活躍の夏のバンドTUBEは、夏の歌を夏前にリリースするに当たり、真冬のお正月開けの1月からハワイに行ったり、暖房をガンガンかけた部屋の中で作曲していたといいます。
それは五感の記憶を引き出すために、実体験して夏を感じる創作に向かったということでしょう。体験が必要とわかっていたということですね。

五感の記憶(センソリー)がないとどうなる?

撮影や舞台で使用する小道具の中にカバンや段ボールなどがあります。中身がしっかり入っている設定にもかかわらず、その扱いに重量感を感じないものが散見され、シーンの中に違和感を感じさせます。

それらは、たとえ視聴者やお客様が気がつかなくても、知らず知らずのうちに小さな違和感を与えているのです。ちょうど、間違い探しの間違いの方を見ていて「なんか分からないけど変だな」という感覚。それらが積み重なると嘘くさい、面白くない、といったことに繋がってきます。

パントマイムのように捉えてしまう人もいますが、パントマイムは「見せる」を主眼とした演技です。全てが計算され見えるように作られた「形」なのです。
五感の記憶(センソリー)はその対極あると言えるでしょう。

五感の記憶(センソリー)のトレーニング

五感の記憶(センソリー)は、「頭で考えるのではなく肌で考える」といった言い方をします。
感覚に注意を向けることは、「起きたことに敏感になる」といった感覚です。
考えないようにしながら、トレーニングのファーストステップとして紹介しておきます。

  1. まず、楽な姿勢で椅子などに座ってください。私がトレーングする場合は、リラクゼーショントレーニングをする時の楽な姿勢になります。
  2. 目を閉じて、楽な気分な状態になります。
  3. 自分が毎日使う(或いはよく使う)マグカップを手の中に思い浮かべてみましょう。
  4. マグカップを頭で考えずに、手の中に感じていきます。
    大きさは?素材は?陶器?ガラス?プラスチック?冷たい?カーブする部分はどんな感触?縁の厚さはどう?取っ手はどんな形?取っ手はどんな風についてる?柄があれば、柄の肌触りは違う?などなど・・・。
    詳細に詳細に指先や手のひらでその感覚を見つけていきます。
    慌てずにゆっくり、10〜20分くらいは使ってください。
  5. 肌感覚で自分のマグカップを感じられたら、そのマグカップの中に熱々の珈琲(お茶)を入れてみましょう。
    マグカップが熱くなる感覚、湯気、そして香り、などなどを感じていきます。
  6. ゆっくりと一口飲んでみましょう。
    唇にコップの縁が当たる感触、取っ手を持つ手の力加減、指とコップが面している部分の熱、唇を超えて入ってくる珈琲、珈琲を熱いと感じる器官、喉越し、熱いものが喉を通っていく感覚、その後に出てくる「んはぁ」という声などなど・・・。体験していきましょう。

ここまでをワンセットとします。
すべてのステップはスロー&ステディです。ゆっくりと着実にやっていくことが大切です。

またうまく出来ているかな?大丈夫かな?変じゃないかな?と考えないこと。
思考から離れ、感覚(センセーション)へ自分の注意の集中を持っていくことです。

きっと何度も注意が逸れていくでしょう、しかしながら、それを悪と思わずに、そんな自分を受け入れ、「あ、考えちゃった、また集中を戻そう」といった気持ちで、注意の集中を戻すことです。

つまり、五感の記憶(センソリー)をトレーニングすることは、注意の集中をトレーニングすることにも繋がります。

メソッドアクターたちの五感の記憶(センソリー)のトレーニング

アル・パチーノは、蝋燭の炎に手をかざすという行動のために、五感の記憶(センソリー)の練習を何度も何度もしたそうです。蝋燭に手をかざす五感の記憶(センソリー)に数ヶ月を使ったとか。(うる覚えですみません)

ハーヴェイ・カイテルは、アクターズインタビューという番組で、五感の記憶(センソリー)について言及しています。
最初は何をやっているのか分からなかったと。しかし、集中してやっていくことを続けると、こういうことか!と分かったと言っています。継続することが大事だとも。

まとめ

すべてのトレーニングは継続の上に成り立ちます。

一回ワークショップに参加して、なんとなく感じた、分かった、手に入れた、そんな気になっても、私たちは翌日には簡単に忘れていく生き物なのです。

五感の記憶(センソリー)は最初はきっと頭で考えてしまう可能性が高いと思います。
演技トレーナーや演技コーチのもと、一緒にやっていくのが望ましいトレーニング。

なんかよく分からないな、と考え出したら思考の坩堝にハマりますし、正解はどれなの?など思いながらやり続けた場合、感じているフリをしたり、感じることから離れてしまいます。

その状態をチェックしてもらうことが大事でしょう。
チェックを受けながら、注意の集中を感覚に戻していくことで感覚から心が動き出します。実は五感の記憶もじっとして考え込んだ時点で何も動き出しません。カップに触るなども行動(指を動かすなど)してみて初めて心が動き出すのです。

リラクゼーションと合わせて、その際に感じたまま声を出すことを私の五感の記憶(センソリー)トレーニングではやっています。
ぜひ、合わせてトライしてみてください。

また、五感の記憶がどのように心と体に結びついて、演技の実となるのか、もう一歩踏み込みたい方はこちらの「五感の記憶(センソリー)の重要性と、五感と心体とのリンクについて」を一読ください。

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