あなたが自分の役に共感できない、好きになれない時はどうしたらいいか?

あなたが自分の役に共感できない、好きになれない時はどうしたらいいか?

こんにちは、演技トレーナーの山縣です。
演技のことは言葉だけで伝えることの難しさは重々理解しているところですが、少しでも演技初心者の方や、久しぶりに俳優業を再開する方などに役立ててもらえたらと考えています。

私のモットーとしては、ブレることはありません。
「日本の俳優のレベルを底上げする」
「演技ツールを一般の方に解放し人生に生かしてもらう」

今回は、時々質問される内容です。

生徒さん

自分の役に共感できない時とか、好きになれない時はどうしたらいいでしょうか?

結論を伝えます。

アリトさん

役が何をしていても、どんな人でも、あなたがジャッジしないことです。

偏見を捨てて、役を紐解いていきましょう。
そして、役と友達・親友になるくらいに興味を持って、近づいていきましょう。

役づくりでは、あなたの色眼鏡を置いていきましょう

まず最初に、認識して欲しいことがあります。
あなたはあなたの育った環境や経験などによって唯一無二の倫理感や道徳感という色眼鏡を持っている、ということです。
きっとこう答えるかも知れません。

生徒さん

いいえ、色眼鏡なんて持ってないです。普通ですよ。

こう思っている方が割と多いのでこう伝えています。

アリトさん

あなたの普通は、他の人のとっては普通ではありません。

そうなんです、それなあなたにとってのみの普通なのです。
実は、まずはそんな自分の色眼鏡を知ることから始めていきたいところなんです。

あなたの演じる役をジャッジしてはいけない理由

あなたの色眼鏡を通して、善や悪、良い人、悪い人、好き、嫌い、を判断することは、役を知る上で意味はありません。

こう想像してください。
あなたが役に偏見を持ったり、レッテルを貼ることは、役に対するイジメだと認識してください。もしも、自分がそうされたらと想像してみてください。
人に対して、偏見やレッテルを貼るということは、心地よいものではありませんよね?
キャラクターのレッテルも、生きづらさにつながってきませんか?

もし、偏見やレッテルを貼られてしまったら、あなたは「私の本質を全く理解してくれていない」ときっと憤りを感じるのではないでしょうか。

アリトさん

役を生きることは、つまり「人間理解への旅」なのです。

たとえ、殺人者でも、性加害者でも、臆病者でも、小ずるい人でも、虐めるような人でも・・・
あなたがあなたの役を裁いてはいけないのです。
裁いた時点で、役を知ることから離れていきます。
ジャッジをしてはいけない理由は、本質を取り逃がしてしまう原因となり得るからです。

役を知ることは役の色眼鏡に付け替えること

時には、その色眼鏡を取ることが怖いかもしれません。
或いは、苦しいかもしれません。
あなたの性格と正反対の役を生きることだってあり得るからです。

もしも、あなたが被害者の経験があり、加害者の役にキャスティングされたら、きっと心に大きな負担が襲ってくるでしょう。

苦しいですが、それでも、それでも、あなたは台本から役を分析していく中で、色眼鏡によるジャッジを捨て、役の行動やその裏にある理由を探していくのです。

それは、あなたの色眼鏡を置いて、役の色眼鏡を見つけていくことを意味します。
すると、役が行動した理由、或いは、それに伴う過去を見つけていけるのです。
それこそが、人間を理解する大切な要素。

たとえ、役が「私は悪いやつだ」と言っていたとしても、あなたはそれを正当化するものを発見していく必要があります。

ヒントは全て台本に書かれています。

書かれていなければ、台本のさまざまなピースから、想像して見つけていく必要があります。
それはとても興味深い発見になっていくでしょう。

悪役は悪役であることを知らない

悪役は悪役だと認識して演技した時点で、人間として面白くなくなるのです。
客観的に悪役だと認識されていても、あたなはあなたの役を生きるだけなのです。

クリストファー・ノーラン監督の映画「バットマン ダークナイト」のジョーカー役のヒース・レジャーは自分が生きることの正当性を持って瞬間瞬間生きています。そこに私は悪役だから、といったジャッジはありません。
ジャッジしてしまったら、きっとあそこまで生きたジョーカーは生まれなかったでしょう。

映画「ミザリー」のキャシー・ベイツも、作家を拉致・監禁・脅迫をして小説を自分好みに書かせていきますが、彼女がそうするのには正当な理由があり、行動しているのです。
それを発見すると、役はとても血の通った人間になっていきます。
ともに素晴らしい演技でした。

役と友達になるため、共通項を探していく

スティーブン・スピルバーグ監督の名画「シンドラーのリスト」において、名優レイフ・ファインズがナチスの冷酷な将校を演じた際のことを参考までに記載しておきます。
今では、ナチス=悪、ナチス=ドイツの過去の大きな過ち、として認識されていますし、多くがそう教えられています。
私も、アウシュビッツこと、ユダヤ人の虐殺、人種の優越など、大きな怒りを感じます。

レイフ・ファインズは、冷徹な殺人鬼となったナチスの将校の「人を虫けらのように殺す気持ちとはどういうことか」から分析していったのです。
ジャッジしていたらそのような視点に立てるはずはありません。

自分が優越を感じてることとはどんな時か、そんなところから膨らませていったり、またユダヤ人を蟻のように見ることで、可能になっていったというお話です。

自分とは正反対でも、その役を知るにつけ、言っていることが正しいとさえ感じてくるように親友になるつもりで役を知っていくことが、人間理解へと繋がり、役の理解へと繋がるのです。

例えば、あなたが普段感情的にならないとして、役が感情的になる役だっとしたら。
その役が感情的になる理由や、また反対に感情的になっていないところなど見つけていくと、小さな共通点が見つかったりします。

普段、感情的にならないとしても、本当は言いたかった本音を隠し持っていたり、言いたくても言えなかったことがあったりすれば、本音を膨らませてみると、誰かに言いたい衝動が生まれ、誰かに喋った時、それが結果的に感情的に見えるかも知れません。

例えば、人に大切なアクセサリーを貸して壊された時の憤りを声に出してみたりすると、感情的って悪いことだけじゃなく正直なことかも、と発見するかも知れません。
そうやって、役を理解して見つけていくのです。

まとめ

台本に書かれている役の情報は、別の役から見えた面の記述やト書き、役の行動から見える一面などを合わせて見ていきます。

ポイントは、台本で行動していることは、「私だったらしない」ではなく、「役が行動していること」をただ事実として受け入れ、役を理解していくことです。

また、台本に書かれてる役は、すべて一面です。
台本に書かれていない残りの人生を、あなたは台本から役が持っている色眼鏡を見つけて、その色眼鏡となった原因などを探っていくのです。

最後に、まとめとしてお伝えしておきます。

ある女の役が、ある男を誘惑し、お金を盗んだとします。
窃盗犯の人、と決めつけるのではありません。
また、この役は女を武器にして、油断させてお金を男から巻き上げるタイプだ、と決めつけてはもったいない。

こう考えて欲しいのです。
この女の役は、男を誘惑してお金を盗んだことがある人なんだ。
つまり、その経験がある人、という捉え方。

色々な一面を知っていくことで、多面的に役を知ることができるようになれば、共通点を発見し、膨らませ、役と友達になることができるかもしれません。
人間理解の旅をしながら、ぜひ、役を理解するプロセスを楽しめたらと思います。
また補足ですが、自分を知れば、もっともっと役を発見し易くなるでしょう。

最後に

ここまで読み進めてくださり、ありがとうございます。

もし、記事を読み終えて「頭ではわかったけれど、自分の場合はどうなんだろう?」と少しでも感じていらしたら、一度私と話をしてみませんか。

演技の技術、表現の壁、あるいは日常のコミュニケーション。 一人で考え込むよりも、対話(セッション)を通じて今の感覚を言葉にしてみることで、驚くほど道が開けることがあります。

月に10名様という限られた枠ではありますが、あなたとお話しできるのを心から楽しみにしています。