私が「演技トレーナー」として今在るのは、演技というツールの力を信じているからです

私が演技トレーナーとして今在るのは、演技というツールの力を信じているからです

私は何かで大成功してそれを伝えているわけではありません。演技トレーナーとしての小さな成功体験から伝えている内容になります。演技トレーナーに大成功という言葉は、この日本においては今のことろありそうにありません。その後の演者の活躍になりますが、師匠としているわけではありませんので私の名前が立つことはほとんどありません。
いわゆる影の存在ではありますね。海外では、どこそこに師事なんてことはよくありますね。おかげで演技トレーナーの仕事もどんどん忙しくなっていくというのはあると思います。逆に日本においては、学校の名前が先に立ったり、といったことが多いのではないでしょうか。しかしながらおかげさまで、私の方もどんどん忙しくなっておりますが、名前が立っているわけではありませんので、悪しからず。
そこで、少し私のことと、演技トレーナーとしての目的をお伝えしたいと思います。

私が演技トレーナーとして今在るのは俳優からスタートしたキャリアから語る必要があります。

山縣有斗 舞台で怒鳴り込むシーン

19歳で舞台デビューし、上京後「はみだし刑事情熱系」でレギュラー巡査役でデビュー。
上京後最初の事務所の演技講師やその事務所に関わる「はみだし刑事」の中野昌宏監督の指導のもと演技を磨きながら劇団を立ち上げ脚本・演出・主演を兼ねて活躍。
その間、風間トオル氏の個人事務所に所属し、映像出演する傍ら、劇団として外部へWSを始める。
劇団卒業後、個人で演出・脚本・出演した劇団がメソッド演技をする俳優たちだった経緯があり、ようやく演技のベースの確信に迫る。※彼らはNYアクターズスタジオ日本人正会員(当時唯一)ゼン・ヒラノ氏の元、また奥様のミユキ・ヒラノ氏のもとで演技修行した俳優たち。

そこで3作品に関わり、演出や脚本提供、出演をする中、同時に演技トレーニングを兼ね、演出としてその演者の素材を引き出していくことを学んでいき、これまで勉強してきた心理学や行動心理学、また感情解放の方法など重なり、演技を発展させていく。

またメソッド演技を学んだ俳優たちが、必ずしもそれを演技に役立てられている訳ではないことを目の当たりにし、演技トレーニングと本番とを繋いでいくための方法を模索しながら、演技トレーニングの中で足りないもの、演技トーレニング化できていなかった部分を補いながら、現在の演技トレーナーとしての土台を作り上げていった。そんな経緯で、現在演技トレーナーとして社会を良くしようと善処しています。

演出家として驚き目覚めたきっかけの一言とは?

しかし、俳優を知り、演出し、相手に言語化して伝えることの難しさは20代前半の劇団時代が教えてくれました。
その当時、人気上昇中ではあったエンタメ集団演人全開(主宰が私)の中の第二回目の公演に向けた稽古の中でのこと。
バーのマスターとバイトのバーテンダーの2人がメインのキャストのお話でしたが、どう演じても2人が近しい関係に見えない、そう感じられられない距離感にもどかしさを覚えていました。何度稽古しても、「距離感が縮まらないんだよね」と何度も伝えていたところ、バーテンダー役の俳優が突如ブチギレたのです。「わかんねぇよ!じゃどうすりゃいいんだよ!」と。私はその時の衝撃を今でも覚えています。あまりの怒りの沸点の高さにも驚くと同時に、どうすればいいかと言う方法について自分が俳優に答えを持ち合わせていなかったからです。

監督や演出家はリクエストする職業、それに俳優はどう応えるのか

路上で撮影している様子

監督や演出家は要求(リクエスト)する職業です。これは間違いありません。作品に対して欲しい絵(カット)を知っている状態です。ですので。そこに向かって様々なリクエストをしてきます。また、それに対して「どうやったらあなたの希望通りの演技になるか分かりません」なんて言った日には仕事を失ってしまうのが俳優です。しかも「そんなこと自分で考えろ、俳優の仕事だろ」と監督たちは思っている節があります。それが現状です。

俳優が困っているときに、言語化して引き出すことが必要なのが監督の仕事の一つでもありますが、要求しておきながら、そこに力を貸してあげない、また力の貸し方が分からない人が多いのです。私も様々な監督の現場を見てはきましたが、正直演技の引き出し方をわかっていると感じた監督はほとんどいません・・・。
※私が存じ上げないだけで、きっと素晴らしい監督や演出はいっぱいいると思います。上記のことは経験ベースです。

様々な演技メソッドが応えを教えてくれた

映画のポスターがたくさん並んだ画像

さて、話を戻しますが、「じゃどうすりゃいいんだよ!」という俳優の逆ギレに対して、応えるには演技ツールを学ぶ必要があるかもしれません。メソッド演技のルーツは、ロシアのスタニスラフスキーが発祥ではありますが、その答えを探すべく、マイケル・チェーホフという俳優などと切磋琢磨しメソッドアクティングを確立していきました。その内容の解釈により、アメリカでは枝葉していくことになりますが、そのどこを学んでも、きっと解決に向かっていくと思っています。その内容は後術する予定です。

メソッドアクティングを学んだエリア・カザン監督が、俳優マーロン・ブランドがタッグを組んで「欲望という名の電車」「波止場」などで自然な演技を牽引してきたのも、「じゃどうすりゃいいんだよ!」をお互いに追求し合える環境があったからこそかも知れません。
二人は、リー・ストラスバーグステラ・アドラーと言ったメソッドアクティングのアメリカの第一人者たちから指導を受けており、共通言語や理解があったのは疑う余地もありません。

演技者との共通言語があれば尚素晴らしい

俳優がモノローグしている画像

私が演技に演者としても演出としても深くのめり込みながら体現していく中で、俳優の心にタッチしながら、相手の演技を引き出していく機会がたくさんありました。それは偶然ではなく、必然のことだったりします。その成功体験の積み重ねが今にしてあるのです。
しかし、演技トレーニングをしていない俳優に対しは時間がかかったり、そもそも演技の捉え方が違っていたりと、大変です。たとえば、ゼン・ヒラノ式メソッドや、UPSアカデミーで演技を学んでいた俳優や、サンフォード・マイズナーの演技メソッドを学んでいた俳優たちとの共通言語からの相互関係の作りやすさは間違いありません。学んでいてもそれを実際に演技に生かせていると思える俳優もそんなに多くはありません。それを引き出せる演技トレーナーや監督・演出家がもっともっと日本には必要だと考えます。私もその一人になるべく、演技トレーナーとして俳優のベーストレーニングから時に役の本質を引っ張り出すところまで担っているのです。

嘘くさい演技も世界配信されてしまう時代

Netflixで世界配信されて世界中で人気となった「忍びの家」ですが、恐らく日本文化・忍者へのアクションや風貌への興味からが大きな要素だと思っています(すみません、一部だけ辛口します)。演技について、1話だけ観た私もいくつか気になる点がありました。
例えば忍びの家の母親役がスーパーで万引きするシーンがあります。さて、この演技で違和感を感じた人はどのくらいいますか?まだ見てない方は見てから読んでもらえると幸いです。

「内緒で万引きしています」をアピールした極めて説明的な演技だと感じた方はどれくらいいますでしょうか?恐らくスーパーの店員はおろか一般のお客さんでさえ、「この女性怪しい」と感じてしまう素振りがそのまま出てしまっています。これを発見できないスーパーの店員を疑いたくなりますし(忙しくて見てられないならしょうがないという視点もありますが)、他のお客さんも気になるのではないかレベルで忍びとしては大失格なものでした。小学生の方が上手じゃないでしょうか。他のシーンはさておき、このポイントだけを指摘してしまっていますが、その嘘くさい演技が世界配信されているという状態なのです。(ジェイソン。ボーンの方が忍びより凄い忍びです)
そこはコメディだから等など色々と監督の視点があると思いますが、コメディをワザとらしさと考えているなら話は別です(もちろんそれも有りです)。本当は自然な演技のつもりだったのにこうなっていたのなら問題です、というか私は気になります。さらに監督がそのワザとらしさを何らかの目的でリクエスト(後半の話で母親が逮捕されてくてわざと万引きしていたという心理設定があるのであれば)していたのなら、俳優に責任はありません。いや、だったら協議できる関係が望ましいですよね、本当は。

まとめ

女の子がお友達にヒソヒソと耳打ちしてる画像

私が演技トレーナーとして考えること、それは「じゃどうすりゃいいんだよ!」に対して俳優が準備できる心と体をちゃんと作っていくことだと考えています(また脚本の分析や理解力、読解力も同時にトレーニングする必要があります)。
監督や演出のせいにはできません。先ほども言いましが、監督や演出はリクエストしていく職業です。それに対して、形(嘘の演技)で答えるのではく、俳優としての捉え方を通して、俳優としての準備のフィルターを通して、しっかりと返す力が必要になってきます。
その方法についてはまたいつか記述したいと思っています。
返す・応える力は、俳優が演技トレーニングしたかどうかで随分と変わってきますし、それをトレーニングを経て、実践へと還元していく力もさらに必要になります。そういったものをベースに演技で返せる力が育まれば、よりクリエイティブな状態で作品が生まれてくると考えています。

そして、ここまで書いておきながら、最後に本質を言いますと、このメソッドアクティングをベースにした演技ツールは、俳優のみならず一般の社会人、一般の方々にも心と体を健康にしていく素敵なツールです。その意味で、私は広くワークショップを受注しております。

最後に

ここまで読み進めてくださり、ありがとうございます。

もし、記事を読み終えて「頭ではわかったけれど、自分の場合はどうなんだろう?」と少しでも感じていらしたら、一度私と話をしてみませんか。

演技の技術、表現の壁、あるいは日常のコミュニケーション。 一人で考え込むよりも、対話(セッション)を通じて今の感覚を言葉にしてみることで、驚くほど道が開けることがあります。

月に10名様という限られた枠ではありますが、あなたとお話しできるのを心から楽しみにしています。