俳優がシーンの中で生きてない、物語に入れていないと言われる理由

俳優がシーンの中で生きてない、物語に入れていないと言われる理由

こんにちは、演技トレーナーの山縣です。
演技のことは言葉だけで伝えることの難しさは重々理解しているところですが、少しでも演技初心者の方や、久しぶりに俳優業を再開する方などに役立ててもらえたらと考えています。

私のモットーとしては、ブレることはありません。
「日本の俳優のレベルを底上げする」
「演技ツールを一般の方に解放し人生に生かしてもらう」

今回は、物語に入り込めないといった相談から考えてみたいと思います。

生徒さん

脚本を読んで、想像するのですが、その物語にうまく入り込めないです。
どうしたらいいでしょうか?

生徒さん

ダメ出しで、シーンの中で生きていないと言われます。
対応の仕方が分かりません。

こういった混乱を感じてる生徒さんや、現役で頑張っている俳優さんが意外と多いと思っています。
これらの原因を考えたとき、それは演技の方法をしっかりと教えてもらっていないのが原因だったりします。

アリトさん

これまでどこで演技の勉強をしてきましたか?
どんなことを教えてもらったの?

生徒さん

台本をもらって養成所で練習しています。

演技の方法が身についていない方の多くは、事務所を転々としていたり、養成所を転々としていたり、特定の劇団の中で独特の指導者の中で身を置き続けていた方が多いのではないでしょうか。

私も色々な事務所や養成所の実態を見てきましたが、そこで教えられてる内容は・・・なかなか大変なものがありました。(色々な視点があるのでNGと言いたいわけではありません)

困惑している方がいれば、ぜひ一読してもらえたらと思います。
困惑している方の多くは、体系的な演技トレーニングをしっかりと受けておらず、演技の方法を掴めていないという状況です。
言ってしまえば無知なだけなのです。

役を生きる方法を知れば、
目的に向かって行動する方法を知れば、
今その瞬間瞬間に対話する方法を知れば、
あなたの演技は、今を生きることができ、解決し、未来はもっと開けるに違いありません。

台本(脚本)の読み方も教えてもらわずに演技指導される養成所の実態

多くの養成所でありがちなことですが、こんな経験はありませんか?
台本(脚本)の読み方も教えてもらっていないなかで、台本を渡され覚えていきなり演技をしてダメだしを演技講師にされて、「なかなかうまくできない」と悩んで終わるレッスン。

もし、あなたが体系的に演技を学びたいと考えていたり、自然な演技やリアリズムの演技を学びたいと考えているのであれば、私ははっきりと断言します。

そのようなレッスンをひたすら繰り返す養成所やアカデミーがありましたら、即刻辞めた方がいいです。

なぜなら、そこであなたが求める演技を学ぶことはできません。

それをやっているのは、演出家が舞台を創作する時に、俳優にリクエストしていることを、素人に近いあなたにリクエストしているような状況を繰り返しているだけです。

シーンワークの中でやり方も分からずに演技講師の指摘を受けることで演技は上達しません。
無知な相手にマシンガンを打ち込むようなもの。

それはつまり、泳ぎ方を知らない人を川へ突き落とし、橋の上から泳ぎ方っぽいことを言っている指導方法です。
想像できますよね、
・・・溺れます。

俳優が物語に入り込めない原因

物語に入り込めない状態というのは、「入り込みたい」「入れない」とあなたが頭の中で考えていたり、躊躇している状態が生んでいる可能性が高いです。

頭で考えている世界と、想像があなたを刺激することは別物です。
考えることは自意識に繋がり、具体的に想像した世界はあなたの感情を刺激します。
この違いを区別してください。

シーンの中に入り込むためには、その世界を信じる力が必要ですが、自意識や思考で「信じる」「信じない」を考えないようにしたいところ。
また「こう思わなければいけない」とマスト(Must)のように考えてしまうと、辛くなるだけ。
それは泣きたいシーンで「泣こう、泣こう」としているようなもので、体は逆に嘘を見抜き反応しなくなります。

対策方法としては
注意の集中を、思考や心配事に向けずに、そのシーンの中の相手に向けるだけ。


俳優が自分の心配や不安に注意の集中を向けたまま、シーンの中で生きることはできません。
シーンの中で、役が興味を持っているものにしっかりとフォーカスしていくこと、注意の集中を向けることから始めてましょう。

注意の手中を相手に向ける方法

俳優が今を生きていない演技をしてしまう原因

今を生きていない演技とは、シーンの中で役の動きをイメージしてそれを追いかけていたり、誰かの真似をした演技だったり、演技プランを一生懸命に実行していたりしていることが原因です。

それは、役ではなくあなたが考えながらシーンの中にいる状態から生まれます。

物語に入り込めない原因とリンクしてきますね。

つまり、思考や自意識がシーンの中であなたを停滞させているのです。
思考や自意識は時間を止めると考えてください。
実際に心と体を止めます。
また呼吸を浅くしてしまいます。

シーンの中で、あなたが考えれば、物語は止まる

例えば、シーンの練習で台詞を忘れて思い出そうとした時、体が止まったりしませんか?
呼吸が止まったりしませんか?
きっと俳優であれば、台詞を忘れたりした経験があると思います。
その時の体や呼吸の状態は、上記のように停止してしまうんです。

考えながら、演技しようとすると、大小あれどこの状態になっているということです。

なぜなら、思考が働き、自意識が動き出すからに他なりません。

さぁ、では次はシーンから考えてみましょう。
ト書きだけのシーンです。

S#1「トイレに行きたいが、旧友との感動の再会があり強くハグされて動けない、漏れそうになって顔面蒼白になる」

以下、想像してみてください。

「どうやって動いたら自然になるかな?」って考えますか?
あるいは、「1、2、3のタイミングで旧友を押して、驚いた顔して」って考えたりしますか?
または、「この言い方であってるかな?大丈夫かな?こんなポーズで動いて」って不安に思ったりしていませんか?

総じて、タイミングや段取りの心配や不安に注意の集中が向いていますので、今を生きていない状況を生み出しています。

俳優が物語に入り込めない原因と同じく、その注意の集中を、自分以外に向けていけば良いのです。

目的に向かって行動すること、その動機、そして障害

注意の集中を自分以外に向ける、つまり旧友に向けて、役の目的を達成するため行動することに挑戦しましょう。
考えるポイントは、4つ!

  1. 目的:どうしたいのか?
  2. 動機:どうして?
  3. 障害:目的達成を邪魔するもの
  4. 行動:どう行動すると目的を達成できるか。

行動すること、想像することで、心は動き出します。
人間はそのようにできています。
例えば、下を向いて座ってみてください。
その状態で、ポジティブに考えることができますか?
きっとできないと思います。
頭を下に向けている状態は、心が塞ぐように反応しやすいのです。
頭を下に向ける行動をすることで、私たち人間は不安や心配などを引き起こすことが可能なのです。

さて、今回のシーンで実際にどんな行動が生まれるのか。
この4要素を、さっきのシーンに当てはめてみます。

S#1「トイレに行きたいが、旧友との感動の再会があり強くハグされて動けない、漏れそうになって顔面蒼白になる」

  1. 目的:体を離させる(旧友のハグの)
  2. 動機:漏れそうだから、トイレに駆け込むため
  3. 障害:強いハグがトイレへの行く手を阻む。相手の感動を崩したくない。など。
  4. 行動:膀胱を強く圧迫しないように、押しのける

尿意が強烈に襲ってくる想像を体から体験すると、あとは目的に向かってよーいスタートするだけ。
旧友との再会という邪魔に対して、どんな行動が生まれるでしょうか。
そう、目的達成のために実際に押し除ければ良いのです。
関係にもよりますが、相手を押し除ける仕方も変わってくるでしょう。
そして、今その瞬間瞬間で対話していければ、面白いシーンになります。

尿意の体験も、膀胱あたりに力を入れてブレーキをかけてみるとおのずとそんな気持ちがしてくるのではないでしょうか。

体が想像の刺激を受けて、きっと尿意を体現した状態でスタートできるはずです。
心と体の繋がりについてもまた別で記述したいと思います。

まとめ

私の経験上ですが、シーンの中での、どのように何を考え準備をしたらいいのかを知らない方が非常に多いです。
演技経験者さえも。

また、やり方は知っていても、それを行動にうまく移せずに立ち止まっている人もいます。
目的に向かって「行動」する、その「行動」そのものができない方も散見されます。
演技トレーニングが実践に生かされていない状態ですね。

参考のS#1のト書きだけのシーンのように、シンプルなワークから役を生きる経験をしていければ、行動することに体が慣れていきます。
察する社会の日本に生きている私たちにとって、行動することが基本的に苦手な人が多いと感じてます。
練習を繰り返せば、障害にぶつかったときに自然な葛藤が動きだし、心も体も自然に反応し合える状態が生まれます。
旧友とも感応していければ、多くの感情が勝手に吹き出します。

また、トイレをギリギリまで我慢する体験をしっかりと準備できれば、勝手に表情は変化してきます。(リラクゼーションも必要ですね)

体験の準備も演技トレーニングが必要です。
五感の記憶(センソリー)を使って準備することや、体の動きから想像を刺激する方法によって対応したりしなければなりません。
それらの方法も習得していければ、シーンはリアリズムの演技で素晴らしいものになります。

今を生きるためには、その動機から行動して、目的に向かい、自分以外の対象に注意の集中を向け、瞬間瞬間に反応していくだけ。

瞬間瞬間に対話していくことは、サンフォード・マイズナーテクニックのレペテションが生きる状態になります。
レペテションの演技トレーニングをしていくことで、さらにシーンはパワーアップするのです。
そのツールについては、別の記事でご紹介します。

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