トム・クルーズから見る、泣く演技の体の状態。あなたはどうなる?

トム・クルーズから見る、泣く演技の体の状態。あなたはどうなる?

こんにちは、アクティングコーチ・演技トレーナーの山縣です。
演技のことは言葉だけで伝えることの難しさは重々理解しているところですが、少しでも演技初心者の方や、久しぶりに俳優業を再開する方などに役立ててもらえたらと考えています。

私のモットーとしては、ブレることはありません。
「日本の俳優のレベルを底上げする」
「演技ツールを一般の方に解放し人生に生かしてもらう」

さて、改めて泣く演技について。

この「すぐ泣ける」「号泣できる」それらが技術としてある種のステータスや演技の凄さの基準だと、あなたが思っているのであればその価値観は置いていきましょう。

泣くために泣くレッスンがYouTubeで紹介されたりしていたのを見るに…
無理やり「泣こう」「泣こう」と自分に言い聞かせて頑張ったらそうなっていった現象のように感じるのです。
※どの動画かは触れません

たとえ泣く練習をしたところ、私たちはシーンの中で自然に涙がやってくるわけではありません。
もしあなたが泣く練習の成果として、シーンの中で泣いた場合には、そこには妙な白々しさが残ってしまいます。

時々子役の涙が、嘘っぽく、白々しいものがあるのは全力で泣こうとしているからです。

例えるなら、大事な話をあなたはしているのに、相手を見たら「別のこと考えていました」といったニュアンスが読み取れたらどんな気分でしょうか?

自分だけのクロースアップだけの涙ならそれでもまだ良いですが、対話の中で起きるものや、対話のシーンからクロースアップの場合は、相手役にとっても、カメラにとっても、観客にとっても違和感を与えてしまうでしょう。

自然な流れで、役の状況から心を動かしたいですね。
今回は、泣くことについて体に起きるメカニズムや、スーパースターのトム・クルーズの演技からも参考にしながら見ていきたいと思います。

その瞬間に反応して、涙腺が緩むのが理想

あなたはどうやってシーンの中で、泣きますか?
泣こうとして泣く、つもりではないかもしれません。

悲しいことや辛いことを思い出しながら泣いていますか?

例えば、何かを思い出しながら涙を流したとしたら、それは相手と繋がっていない状態となります。
対話が起きていない中、あなたが一方的に流した涙という結果は、言ってしまえば独りよがりの状態になります。

対話が失われたシーンほど辛いものはありません。

相手と関わりながら涙は出てきたいものですね。
目の前に相手がいなくとも、関わる相手を想像し体験することでそうありたいものです。

まずは自然な自分のメカニズムを知っておくと、やるべきことが分かるかもしれません。

男性に多い、泣く=弱いの刷り込み

子どもの頃から男性は、

「泣くな、男のくせに」
「男なんだから我慢しなさい」
「男のくせに女々しい」

といったことを親や家族、或いは幼稚園や学校で言われていた人も多いのではないでしょうか。

最近こそ、ジェンダーが問題にもなり、その妙な男女の役割は薄まってきていますが、未だにその抑圧を受けて育った人はたくさんいます。

また、泣く=弱さ、といった認識を刷り込まれてしまっていて、涙腺が緩むと体に力を入れてブレーキをかける習慣が男性には強いかもしれません。

そのため、日常から涙が出そうになると同時に体がブレーキをかける習慣が起きるのです。
喉に力が入ったり、背中や腰に力が入ったり、場合によっては全身に力を入れたりします。

この反作用を知って、習慣的な体の緊張を知り、ブレーキを緩める力をまずは手に入れることが重要になります。

「ミッション・ポッシブル3」「マグノリア」から観るトム・クルーズの涙

世界のスーパースター、俳優トム・クルーズは、その涙腺が緩んだ際にかかる体のブレーキ作用がものすごく強いように感じます。
素晴らしいアクターには間違いありません。

しかしながら、トム・クルーズが「ミッション・ポッシブル3」のオープニングから見せる演技は、全身にものすごい力が入っているのが分かりますでしょうか?

それが悪いと言っているわけではありません。
極限の状況下、そうなっていると考えたいと思います。

それでは、映画「マグノリア」での父親との対面シーンはどうでしょうか?
こちらもかなりの力を全身いこめているのが分かると思います。
他のトム・クルーズ作品を観ると、顎や口元、首とかなり力が入っているのが分かります。

面白いことにたまたま両方ともこの映画での共演者は、フィリップ・シーモア・ホフマンです。
まさに対極の演技の状態と言えるでしょう。

どちらの映画も、フィリップ・シーモア・ホフマンが余分な力が抜け柔らかいことが分かると思います。
涙腺が緩んでも自然な状態なのです。

特に映画「マグノリア」でのトム・クルーズが父親と再会するシーンでの2人はまさに対極。
同じシーンの中で涙を流すフィリップ・シーモア・ホフマンは無理なく体が緩んでいるのが分かると思います。

それぞれの演技の土壌が違うのが分かってきますが、無理なく流れているのはどちらでしょうか?

言ってしまえば、雑巾のようにぎゅっとして絞り出すのか、スポンジのようにやがて流れてくるのか、の違いです。

※映画はどちらも素晴らしい作品です。
また映画「マグノリア」は私のおすすめでもあります!

泣く演技の前に、まずは体を緩める準備を

すぐ泣けるがいい演技か?間違った演技の求められ方と応え方の記事でもお伝えしましたが、俳優は心と体を感じやすい状態にしておく準備が必要になります。

上記のトム・クルーズの体の仕組みからも分かるように、一般の我々には個体差こそあれ、それのブレーキはあるということなんです。

それは感じたことを素直に出せなくなった環境での、まさに生きるための術だったと言っても過言ではありません。

その心の状態を少しほぐして、そして体をほぐすことでシーンの前に準備することが自然な演技に繋がるのです。
心と体は密接に繋がっています。
体をほぐせば心は緩まり、心が緩まれば体もほぐれます。

心が動いていても、あなたの体が硬い状態であれば、何も見えて来ません。
トム・クルーズが凄いのは、泣く以外のシーンでは目の奥の心の動きが繊細に見て取れるところなのです。

しかし、多くの方が心が動いているつもりでも、観ている側には、のっぺらぼうのような表情が映るだけなのです。

そうしなために、オープンナップが必要なのです。
相手に対して心を開いた状態ですね。

そうでないなら、相手から何を言われても簡単に心のドアを閉めてしまいます
役として嫌いな相手であっても、傷ついて良い覚悟であなたは相手と対峙する必要があるのです。

つまり、心と体をほぐして、感じやすい状態でいることが大前提なのです。

誤解がないように言いますが、心と体のベースのお話をしていますが、有機的に感情が放出されていくにはリラックス以外に準備が必要です。

リラックスした状態から役が体験していたことや、目的向かうこと、そして障害をあなたが体験して初めて心が揺れ動くのですから。

家で練習したら泣けたのに稽古場では泣けない理由

家でシーンの練習をして、自然に思い出されて涙が出て、よしOKと思っていざ本番で挑戦すると全然涙が出て来ません。
そんなことはありませんか?

また、家で練習した時はとても心が揺さぶられたのに、本番や相手を前にしたら全然心が揺れないということはありませんか?

自宅でのリラックスした状態と、本番での周りから見られている目に対する自意識や実際にいる相手や、実際にいない相手に対する時のあなたの状態は別物です。

シーンの中はなかなかリラックスできる場所ではありません。
そう理性的にあなたは思うかもしれません。

当然、役が感じているであろう緊張はあって然るべきです。
こう考えてください。
「緊張とは、余分な力」なのです。

役が体験している緊張は何ら問題はありません。
問題なのは役が体験している緊張を超えて、自意識に苛まれたあなたの緊張や自閉が心を閉ざさせるのです。

注意が自分に向くと、緊張や自己否定で心は心配ばかり。
自宅でリラックスしていた状態は余計な抑圧がなかったので、良かったのです。

自宅に居たくらいに余分な力を抜いて、シーンに入り、相手に注意を向け、目的に向かって行動することができれば、心は動き出すでしょう。

そのための方法や準備は、脚本を使用しながらまた解説する必要があります。
その方法についてはまた改めて用意してみたいと思います。

まとめ

感情は欲しいと思ったら逃げていく。
涙を出したいと思ったら、体はそれを阻止します。

つまり、体はそれが嘘だと無意識のうちに悟る力があるのです。
私たちが想像の刺激から何かを受け取る時、その想像にリアリティがあります。

例えばこんなイメージをしてみてください。
先端が尖った針で、あなたの爪と皮膚の間を刺す。

思わず顔を歪めたのではないでしょうか?

次に、実際に針を持つように親指と人差し指で針を持つようにし、実際に指の間に針を刺すように行動してみてください。

思わず顔を歪めましたでしょうか?
同じように嫌な気持ち、小さな恐怖が起きましたでしょうか?

実際に行動して、体がリアリティを感じた時、同じように感情が動き出すのです。
あなたが泣こうとした時、体が嘘だと知っていれば泣くという結果に結びつくことはありません。

つまり、あなたの行動が役と自分にとって的確かどうかも影響を及ぼすのです。

余分な力を抜いて、役の目的に向かって行動することがベースであり、その行動があなたの体にとって不自然でなく自然に感じられれば、自然と心が動き出します。

まずはしっかりと自分の状態を知っていきましょう。

体の仕組みをしっていけば、リアリティを感じ行動し易くなるのです。
今回はその理解につながれば幸いです。

最後に

ここまで読み進めてくださり、ありがとうございます。

もし、記事を読み終えて「頭ではわかったけれど、自分の場合はどうなんだろう?」と少しでも感じていらしたら、一度私と話をしてみませんか。

演技の技術、表現の壁、あるいは日常のコミュニケーション。 一人で考え込むよりも、対話(セッション)を通じて今の感覚を言葉にしてみることで、驚くほど道が開けることがあります。

月に10名様という限られた枠ではありますが、あなたとお話しできるのを心から楽しみにしています。