こんにちは、演技トレーナーの山縣です。
演技のことは言葉だけで伝えることの難しさは重々理解しているところですが、少しでも演技初心者の方や、久しぶりに俳優業を再開する方などに役立ててもらえたらと考えています。
私のモットーとしては、ブレることはありません。
「日本の俳優のレベルを底上げする」
「演技ツールを一般の方に解放し人生に生かしてもらう」
今回は、インプロ・即興・エチュードについてお話しをします。
インプロはインプロビゼーション(Improvisation)の略
即興(演技)は日本語
エチュード(étude)はフランス語
演技関連で使用する場合は、すべて「即興(演技)」という意味です。
あちらこちらと使用されている言葉ですが、意外とどう違うのかな?なんて考えていたことがある人もいるのではないでしょうか。
そうなんです、全部同じ意味です。
ただ、インプロという言葉は、ちょっと演技競技的にもなってるインプロゲームの事を指すことが多いと思います。インプロ劇団なども存在するくらいです。
発想や物語の展開など時には神技と思えるほどのパフォーマンスが生まれます。また一般企業などでも、シアターゲームのように頭を柔らかくすることにも使用されたりします。
シーンのための演技を試す場合として使う場合は、即興・エチュードという言葉を使用すことが多いと思います。
俳優の演技トレーニングにおいて、いわゆる即興演技はどういう意味があるのか、
どんな価値があるのか、今回はスポットを当ててみたいと思います。
インプロ演劇、インプロゲームとは?

インプロ演劇と言われるものは、あくまで、お題に対してどのように対応していくのか対応力が問われたり、予測不能な出来事に対してどのような反応が起こるのか、また出演者全員で、いわゆるゴールまでどのように達成していくのか協調性などを育む部分が大きいスポーツ感覚のもの。
例えば無茶振りの面白さなら次のような方法で観客を楽しませます。観客となるお客様が事前に好きな単語を紙に書いてもらい、中身が見えないようにして集めて、舞台の俳優がそれをくじ引きのように引いて、物語の中にその単語を生かしたシーンを作り上げていく。そこには、お題から予測不能な次に何が起こるか分からない面白さがあります。
また、そんなお題の無茶振りに対して、何とか対応した面白さや、意外性、あるいは自然に対応したようなことがエンターテイメントとして成立していきます。
素晴らしい発想や物語の組み立て、辻褄合わせは時に感動すら与えてくれるパフォーマンスとなるのです。協調性や発想力をつけるため、有名企業などでも従業員の教育に取り入れているところもあるくらいです。
つまり、上記のようなインプロ・インプロ演劇・インプロゲームというものは、名優を育てるものではありません。シアターゲームの大きな延長線上にあり、その効用や意味はシアターゲームについて記載した別記事をご参考ください。
即興演技・エチュードはシーンワークの前後の体験に有効

演技とは、究極の言い方をしますと、即興の連続です。
役が目的に向かっていくなかで出会う障害に対し、台詞は決まっていますが、即興的に「今を捕まえる」ことでその台詞を発しながら生きていくのが理想。
演技しないための演技方法がメソッド演技(メソッドアクティング)ですので、まさに理にかなった解釈です。
つまり、役を生きる練習に大いに役立つのが即興演技・エチュード(以下、即興演技に統一)。
とあるシーンの前後、または脚本には書かれていないが、役が経験したであろうことを体験させてくれるのが即興演技の生かし方のひとつです。
俳優は役が体験したであろう直前からシーンの準備をして、世界に入ります。まさにその直前を体験するために即興で生きてみる経験ができることは素晴らしいこと。
また、それが役の経験として理にかなっているかどうかを、数パターン試すことでより真実に近づいていくことになります。
それらの経験は役にとって素晴らしい積み重ねとなるでしょう。
即興演技は、型にはまりきったシーンから想像力を得るために有効

役が目的に向かって生きている中で、シーンのリハーサルを通して煮詰まった状態があったり、真実に向かっていない感覚が監督や俳優にあった場合に、別の目的で試してみるために即興を利用することがあります。
それらは役に対して、シーンの中で想像力を広げる大きな助けになりますので、有効です。
時には、それは絶対ないだろうと思えるような目的を使ってシーンを即興で体験することで、新たな発見や気づきをもたらせてくれますので、試していく価値は大いにあります。
例えば、ある役がAに告白するシーンがあったとします。
その役の目的が「Aに自分を好きにさせる」だった場合に、シーンが上手くいかないとして、役の目的を「Aを誘惑する」や「Aに嫌われるようにする」など試してみると意外とAの反応が変わって、結果Aを黙らせることに繋がったりします。
即興演技は、ト書きから想像力を刺激する
映画「タクシードライバー」の1シーンで有名なのが、鏡の前で主役のトラヴィスが
「U Talk to me?」
と言いながら、銃を素早く鏡に向けるシーン。
この名シーンは、即興から生まれたものです。
この名シーンのト書きには、
”鏡に話しかける”
とだけ記載があったようです。
そして、どんな風に話しかけるだろうか、シーンの前後を想像しながら動いてみたところ、銃を相手に向けて威嚇するようなシーンが完成したと言われています。
誤解がないように言っておきますが、シーンが始まってから急に即興で演技したわけではありません。これらはリハーサルで試しておいて、採用され、実際にシーンとして撮影されたもの。
即興というと、いきなりカメラが回っている中で何か演技をするイメージかもしれませんが、リハーサルや稽古で試していくにあたってやっていくのが即興の利用スタイルです。
共演者や監督を本番でいきなり驚かすことを目的とはしていませんので、誤解ないようお願いします。共演者はあなたを信頼してシーンの中で許された行動をしているため、いきなり即興で相手を裏切ることは信頼関係を損ないますのでご注意ください。
これらを踏まえると、即興という言葉でイメージしてしまう「アドリブ」といったニュアンスとは違うことが理解できたのではないでしょうか。アドリブを楽しむのはむしろインプロになりますね。
即興演技は相手役との時間共有を経験できる

映像世界では、数時間前に出会ったばかりの共演者と恋人役や親子役なんてことも珍しくありません。
数シーンだけの撮影において、距離を縮めることも難しかったリしますが、お互いに役との時間共有が必要と分かり合える状態であれば、即興会話で関係を積むことができます。
シーンをリアリティのあるものにするため、2人で役の関係の中でお話していたような内容を即興で会話しながら過ごすだけでシーンの中に見えてくるリアリティが変わってきたりします。
舞台であれば、時間は休憩時間などを利用しながら、それらを体験することで関係を積み重ねたりすることが可能です。
先に伝えた、シーンの前後を即興で体験するもの良いですし、日常会話的にジブリッシュ(むちゃくちゃ語で会話)をするだけでも有効かもしれません。
即興演技とは、あなたの役の世界を広げるためのもの

役を生きるため、または関係を詰まったものにするため、脚本に書いてあるもの解釈を広げるために有効だということが見えてきたと思います。
即興やエチュードは、とても役を掴むために有効なのです。
また、役同士の関係を素晴らしいものに導いてくれます。
まとめ

俳優のアプローチ、役を生かすために使用する即興演技の有効性をまとめると下記のような意味になります。
- 脚本に書いていないが、経験したであろう大事なシーンを経験するため
- シーンに入る前や次のシーンとの間の体験をするため
- 役のシーンの目的を変えて試してみるため
- 役同士で人間関係を体験してみるため
- ト書きから想像を膨らませるため
ただし、以下の注意を補足したいと思います。
- 即興演技とは、アドリブで本番に挑むことではない
- 共演者を驚かすことも目的としない、事前に共演者や監督と相談しておくことが望ましい(信頼関係を大切に)
- リハーサルや稽古で試していくことに躊躇しない
これらを踏まえて大事なのは、まず行動してみるということ。
可能な限り、一人でも行動してみることが大事です。頭で考えて否定をしたり、取捨選択をしたら、頭で考えた演技になりがちです。より自然に動いてみて、「瞬間瞬間を捕まえるため」には行動してみて体験することをおすすめします。
きっと役の世界を広げてくれるはずです。
また、監督や演出家と試してみたいことは事前に相談し、許可を得ることが望ましいので、そのような関係が築ける方と仕事することがいい演技に向かっていける道のりに違いありません。
なかなか、そのような関係をテレビでは作ることは難しいかもしれません。その重要性を知らない現場や、時間の制約があるため試す暇がないのが現実です。
しかしながら、映画であればリハーサルがしっかりあったり、舞台であれば時間が比較的取りやすいのでトライがしやすいと思います。あなたが素晴らしい俳優を目指していくのであれば、ぜひ試してみてください。
ちなみに、私が演出する現場では、常にオープンです。
























