こんにちは、アクティングコーチ・演技トレーナーの山縣です。
演技のことは言葉だけで伝えることの難しさは重々理解しているところですが、少しでも演技初心者の方や、久しぶりに俳優業を再開する方などに役立ててもらえたらと考えています。
私のモットーとしては、ブレることはありません。
「日本の俳優のレベルを底上げする」
「演技ツールを一般の方に解放し人生に生かしてもらう」
さて、今回はレぺテション(リピィテーション)の演技について。
この演技トレーニングは、実践で役立つことは間違いありません。
演技トレーニングをし続けることで「ああ、そういうこだ」って発見することも多いのです。
また演技トレーニングと実践がうまくいリンクしていない人もいるのではないでしょうか。
基本的には現場で体験して初めて血となり肉となる演技トレーニングの部分ですが、実際にプロの俳優たち、名俳優たちがどのように映画やドラマの中で生かしているのか、あるいは無意識に体現しているのか発見してもらえたらと思います。
そして、生きた俳優の演技を通して、さらに理解を深めていければ、あなたの演技は変化していくかもしれません。
ぜひ、何度も何度も同じ名画・名演技を見てください。
レぺテションはお互いを見ることですが…
レぺテションは、お互いを見続けて最初はやっていく演技トレーニングですが、実践はそれだけではないのです。
この演技トレーニングではお互いに感応していくトレーニングなのです。
重要なのは、瞬間・瞬間繋がり合い、感応する瞬間・瞬間を生きること。
これは、目を逸らしたり、違う方向を見ていても実は成り立ちます。
想像してください。
いや、思い出してください。
あなたが初恋をした頃を。
強烈な興味を持って(特別な注意を払って)相手と対峙するということは、目を見なくてもその存在に注意を向け続けていたのではないでしょうか?
その一挙手一投足、視界の影に映る姿、そして呼吸をも感じられたのではないでしょうか?
また、背面にいたとしても、とてつもなく存在感を受け入れ感じていたのではないでしょうか?
そうなんです。
その瞬間・瞬間をあなたは感応していたのです。
レぺテションが実際にシーンの中で生きる時、注意が相手に向いていれば、たとえ目を合わせていなくても感応して生きていられる状態が生まれます。
お互いに深く関わったそのシーンは素晴らしく、自然な感応が起き、お互いが影響し合っている演技が生まれるのです。
レぺテションがそのままシーンに!?「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」
これぞレぺテションそのままな演技が見れる映画を最初にご案内します。
映画「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」です。
監督:ガス・ヴァン・サント
脚本:ベン・アフレック、マット・デイモン
出演:ロビン・ウィリアムズ、ベン・アフレック、マット・デイモンなど
あらすじ
深い心の傷を負った天才青年と、同じく失意の中にいた精神分析医がお互いにあらたな旅立ちを自覚して成長してゆく姿を描く感動のヒューマン・ドラマ。ボストンに住む青年ウィルは、幼い頃から天才ゆえに周囲から孤立していた。だが、彼の才能に気付いた数学教授のランボーは、ウィルに精神分析医のショーンを紹介する。ウィルはショーンにしだいに心を開いてゆくが、彼の才能に気付いた政府機関や大企業が接近してくる。
言わずと知れた名作。
今や名俳優でスーパースターとなった2人ですが、ベン・アフレック、マット・デイモンがまだ知名度も低かった頃、2人で脚本を書き出演した映画です。
注目してほしいのは、この映画のクライマックスとなる、心理学者ショーン役のロビン・ウィリアムズと主役の青年ウィル役のマット・デイモンのカウンセリングシーン。
ここで起きたことは実はアドリブだっとそうですが、自然に心を開かされた名シーンはまさにレぺテションそのまま。
なぜなら、ロビン・ウィリアムズはある言葉を反復(リピート)しているからです。
この瞬間、大きく心を揺さぶられること間違いなしの名シーン。
この他、ウィルの恋人役で出演したミニー・ドライバーの開放的な演技も相まって、映画全体が素晴らしい演技の塊となっていますので、そのあたりも含め必見の映画です。
一度観た方も、何度か見直していくと演技の勉強にとても良いですので、ぜひ。
レぺテションが光る映画残り4選
映画「椿三十郎」
この最後の最後の決闘シーンは言わずと知れた、一瞬の駆け引きのシーン。
見れば圧巻。
俳優同士の究極の無言のやり取りが存在します。
相手に関わり続けた濃厚な沈黙は、凄すぎるレぺテションなのです。
映画「ノーカントリー」
映画「ノーカントリー」
監督:コーエン兄弟
主演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ほか。
少しドライ気味なコーエン兄弟の映画の中に、生きた俳優がどかっと入り込むとものすごい効果を生みます。
殺し屋シガー役のハビエル・バルデムはアカデミー助演男優賞を受賞。
ここでピックアップしたいのは主演2人のシーンではありません。
ガソリンスタンド店主と殺し屋シガーとの会話シーンです。
何を考えているか分からないシガーとそれを受けるガソリンスタンド店主のレぺテションは最高に面白いシーンでドキドキします。
過去に私もこの部分を演技ワークショップで使用したことがあります。
映画「スリービルボード」
映画「スリービルボード」
監督: マーティン・マクドナー
出演:フランシス・マクドーマンド、サム・ロックウェル、ほか
フランシス・マクドーマンドは言わずと知れた名優です。
ここで注目したいのは、ディクソン巡査役のサム・ロックウェル。
この役でアカデミー助演男優賞を受賞しています。
終盤、ディクソンがバーで真犯人とおぼしき男と接触し、対話するシーン。
この注意を相手向け続けながら、特段注意を見せず、相手から情報を引き出していくレぺテションは、まさに最高の瞬間です。
こんなやり取りができたら、俳優同士がもう最高な気分でしょうね。
映画「イングロリアス・バスターズ」
映画「イングロリアス・バスターズ」
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ブラッド・ピット、クリストフ・ヴァルツ、メラニー・ロラン、ほか。
こちらはナチスを扱ったドラマです。
この映画は、まさに俳優が素晴らしいからこそ成り立つ瞬間が散りばめられています。
正直、瞬間・瞬間つかまえて対話しているシーンが多くたまりません。
それはナチスという絶対に怒らせてはならない相手を目の前にしているからこそでしょう。
それを担ったのはハンス・ランダ親衛隊大佐役のクリストフ・ヴァルツ。
彼を象徴として触れてはならない相手をと対峙していく怖さをそれぞれが体験しています。
最初の、ユダヤ人を地下に匿った家族とランダ大佐。
いきなり凄い緊張感を起こします。
ここにはカット割がありながら、レぺテションが起きているのがありありとわかるシーンです。
他も素晴らしいシーンがいっぱいありますが、インディアンポーカーのシーンを挙げておきます。
このシーンはランダ大佐は不在ですが、映画史に残るほどのやり取りが起きています。
ぜひ、その目で確かめてください。
まとめ

いかがでしたでしょうか?
既に知っている、観ている映画でも見返すと新たな発見があります。
名画・名演技はぜひ何度も見返してほしいところです。
その瞬間の生きた記録が映画には残っているのですから。
映画「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」の盲目の役でアカデミー主演男優賞を受賞したアル・パチーノは、相手を見ていない中、瞬間・瞬間相手を感じて反応しています。
それに応えたクリス・オドネルとのホテル自殺前のやり取りは圧巻ですよね。
ご紹介できていないものがたくさんありますが、その中でもぱっと浮かんだものを列挙しました。
「ゴッドファーザー」「ゴッドファーザーPART2」もレぺテションだらけです。
レぺテショントレーニングが生きたのか、そもそも相手に注意を向け続ける力が自然あるのか、色々な土壌で育った俳優がいますので、全員が俳優トレーニングからそこに生かされたかは不明です。
しかし、知っていてできることと、思わずできたことは違います。
何度も、我々はそれを提言していく必要があります。
名優・名演技を参考にしながら、いろいろと発見していければさらにモチベーションも上がるのではないでしょうか。
またそのゴールが見えることで、ますます素晴らしいトレーニングに繋がると思います。