演技が上手くなるには?見せる演技の縛りから離れて、体験の演技へ!

演技が上手くなるには?見せる演技の縛りから離れて、体験の演技へ!

こんにちは、アクティングコーチ・演技トレーナーの山縣です。
いつも「Acting Life net」のブログをご覧いただきありがとうございます。

演技のことは言葉だけで伝えることの難しさは重々理解しているところですが、少しでも演技初心者の方や、養成所や俳優学校を卒業してもなかなか実践に生かせない方を対象に、私の記事を役立ててもらえたらと考えています。

私のモットーとしては、ブレることはありません。
「日本の俳優のレベルを底上げする」
「演技ツールを一般の方に解放し人生に生かしてもらう」

さて、過去のこんなエピソードからお話してみたいと思います。
私の演技レッスンを受けるのが初めての方で、俳優の勉強を始めたばかりの人とたちでした。
しかし、他の講師の演技レッスンを受けており、少し演技に対する知見を持っている様子。

ありとさん

あなたが他で教えてもらったレッスンはどんなものでしたか?

生徒さん

コンビニの店員の役をするのに、どうやったらそう見えるのか色々と考えさせられました。
見せ方が難しくて・・・。

ありとさん

そっか、どう見せたらいいか教えてもらったの?

生徒さん

そうですね〜、でも難しかったです。

こんな感じで様子を伺いながら、私は危惧していしまいます。
何が問題なのでしょうか。

それは、ここで日本の演技の世界においてよく教えれること「見え方」が重視されている点なのです。
講師が言ったからなのか、それとも生徒がそう解釈したからなのか、それは分からないのです。

もし、あなたが海外のアカデミー賞レベルの俳優・海外ドラマの演技が素晴らしいと感じているのであれば、またそこを目指したいと思っているのであれば、その意識を変えることが演技レベルを上げる(上手くなる)ことに繋がります。

結論からお伝えすると、「見え方」から離れて「役を生きる」ことに向かいましょう。

※『「演技が上手・下手」の違いとは?アクティングコーチが教える「良い演技」の考え方』の記事もご参考ください。

演技が上手くなるには?-見え方の何が良くないの?-

「見え方」の何がよくないのか?というと、それは結果がそうなっているだけのことであるからです。
もし、コンビニの店員に見せるにはどうしたらいいか?考えるのであれば、簡単です!
コンビニの店員のユニフォームを着ればいいのです。
解決しましたか?

そこにどんな時間を使おうとも衣装で解決します。
消防士なら消防士の、ピザ屋ならピザ屋の、お寿司屋さんならお寿司屋さんの、サラリーマンならスーツを・・・。
そして、衣装がないままそれをどう見せるのか悩んだところで、そうなっている人の結果、つまり形を真似るだけに過ぎません。

「見え方」の演技=「見せる演技」=形の演技

こう捉えてもらえたらと思います。

演技が上手くなるには?-見え方は監督の視点、俳優は別の視点-

私が上京したばかりの頃、あるドラマ監督のワークショップはひたすら「見え方」の追求でした。
内面の掘り下げは気にしていないのです。
それはカメラを通して「どう見えるか」を監督は追求する仕事だからです。
俳優の演技理解、人間理解よりも、作品の画面に徹していた人と言えます。

それは監督という仕事において当然の視点。
しかし、俳優はその視点のまま演じてしまうと「見せ方」に注目して演技をしてしまう可能性が高くなります。
事実、そこで出会った多くの俳優たちの意識は結局のところ、自分という個性を演技の中で見せることに向かっている状態で終始していました。

それらの俳優は内面が決して何もないわけではないのですが、薄いヴェールのような内面を、時には強引に内面を引っ張り出して頑張っている状態です。

演技を追求する中で、
役の人物の人となりとなる人柄や癖などの「見せ方」「見え方」の追求と、
役の人物の「感情の見え方」、どう考えているかの「見せ方」の追求の、
この2本柱が演技だと思われているフシがあるのです。

業界の中で監督やプロデューサーも、そのレベルで理解している方も非常に多いのではないでしょうか。
日本の演技レベルの向上のためには、その認識から変わっていく必要があります。

そこをあなたが担うことはないですが、日本の演技は世界的にも遅れをとっているといわれる原因がここにあることをどうか知っておいてください。

演技が上手くなるには?-生きた演技に変えていく-

当然ならが、役そのものが見え方を意識している場合はそこに役としても注意を向けるべきです。
前髪が気になる役なら、誠実に前髪が気になる理由を探しましょう。

しかし、多くの役はそうではありません。

「見せ方」「見え方」は、結果的に「そう見えている」「意図せずとも見えてしまっている」のであることを理解していけると人間理解へ進むのです。

コンビニの店員の見せ方を考える前に、以下のことを想像して欲しいのです。

  • どうしてそこで働いているのでしょうか?
  • アルバイトのため?
  • ならどうしてでしょうか?

それが学費を稼ぐためか、遊ぶお金のためか、光熱費のためか、様々です。
或いは個人経営のコンビニで、親がオーナーで自分が働かざるを得ないのであれば、また違います。
なかなかないですが、コンビニが大好き過ぎて、コンビニで働いてみたくて、働き始めた人、かもしれません。
上京したばかりで最初のアルバイトか、数年働いているのか、でも違います。

そこに居る理由、それによって、コンビニの店員でも随分立ち振る舞いが違ってきませんんか?
想像するだけで、何となくその人物の背景が見えてきませんか?

演技をする上で、理解していくのは、その役がそこにいる理由や動機を見つけて欲しいのです。
遊ぶお金欲しさにちょっとお小遣い稼ぎで働いてる学生の認識の中で、週に3回レジに立ったり、商品を補充したりする姿は、全生活を支える収入をコンビニで得ている週6日勤務の人とは責任感や要る理由や何かが違うかもしれません。
それは形ではなく、目的や動機によるものなのです。

視点を2つ考えてみましょう。

あなたが、監督や演出家に「コンビニのアルバイトで面倒くさそうに演じてください」と言われたとします。

あなた次のうちどちらで対応しますか?

1:面倒くさいってこんな感じだよね。と、だるそうに演じました。
2:家でもやることいっぱいあるんだよね、早く帰ってそれをやりたいのに、もー、と思って仕事している。

この違い。

1と2の演技の違いは何でしょうか?

1:学生だから適当だろうと、面倒くさそうに演じようなんて考えると、「見せる演技」に変わってしまいます。
2:学生でやることが多くて、現在自宅で課題をたくさんやっている、頭でもそのスケジュールでいっぱいにして、立っていると自然と心ここに在らずで、面倒くさそうに結果的に見える可能性があります。

面倒くさそうに見えるのは、結果なんですね。
結果を演じると形の演技になり、結果になるような過程から人物を想像して生きるのが生きた演技、つまり体験の演技となるのです。

演技が上手くなるには?-生きた演技に変えていく-

演技が上手くなるには、生きた演技に変えていくことなんです。
それは、上手い演技という言い方よりも、素晴らしい演技、生きた演技、すごい演技、ということに繋がります。

演技は大きくわけて2つあると言われています。

2種類の演技の分け方

1:見せる演技
2:体験する演技

※演技の種類については詳細はこちらの「演技には大きく分けて2種類あります、何だと思いますか?」の記事をご確認ください。

この「体験する演技」こそが、このActing Life netでも常々目指してる演技です。
「体験する演技」を定義すると次のようになります。

今、初めて体験したかのように今を生きる演技

ですね。
考え方、認識が変化すると準備する方法がかわっていきます

演技が上手くなるには?-まとめ-

私のワークショップを初めて受ける方には必ず、このワークショップがどんな演技に結びつくためのものか、どこを目指しているかを説明します。

その前に、演技はどんな種類があるか聞くのですが、その2つを書き出して、
「世界に通用する俳優の演技をしたいと思いますが、どっちをやると思いますか?」
と聞いてみるのです。

1:見せる演技
2:体験する演技

※演技の種類については詳細はこちらの「演技には大きく分けて2種類あります、何だと思いますか?」の記事をご確認ください。

上記のようにホワイトボードに書いて説明しています。
するとほとんどが「見せる演技」を選ぶんです。

これがどういうことかというと、幾分経験がある俳優も、ほとんど初めての俳優も、ちょっとだけ他の講師からも演技指導を受けた俳優の卵も、その認識だったということ。

その現場は、俳優たちが私を知らない中で、レッスンに参加したらたまたま山縣有斗だったという状況下です。
ですので、生徒は講師を選べないですが、当然私も生徒を選べるわけではありません。

しかしながら、2時間のレッスンの中で、しっかりと「体験する演技」を体験して、演技の素晴らしさや可能性を感じて終わりました。
2時間とは非常に短い時間ですが、意識変化のきっかけになると思います。

演技は日々の積み重ねですから、意識が変わると日常の感じたことの処理の仕方が変わってくると思います。

演技が上手くなるには、まずは演技に対する認識・意識を開くこと。
そすれば、必要なことが見えてきますよね。

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