こんにちは、アクティングコーチ・演技トレーナーの山縣です。
演技のことは言葉だけで伝えることの難しさは重々理解しているところですが、少しでも演技初心者の方や、養成所や俳優学校を卒業してもなかなか実践に生かせない方を対象に、私の記事を役立ててもらえたらと考えています。
私のモットーとしては、ブレることはありません。
「日本の俳優のレベルを底上げする」
「演技ツールを一般の方に解放し人生に生かしてもらう」
さて、今回は役のアプローチのベースについて。
基本的には、その役の目的が分かれば演技(Acting)が可能です。
サンフォード・マイズナーが言い当てたこの一言につきます。
演技とは、行動すること。
Acting is doingなのです。
そして芝居・ドラマの語源であるDramaという言葉の語源はギリシャ語で「行動」。
はるか昔から、目的を持って行動することから心が動くことを知っていたということではないでしょうか。
今回は、目的について、脚本分析や役のアプローチのために言及してみました。
大きな目的の中の小さな目的、そしてさらにその中の目的、それらの考え方をみてみましょう!
そもそも役の目的ってどういうこと?

目的という言葉だけではピンと来ない方もいるかも知れません。
目的というのは、こう言い換えてみると分かりやすいです。
あなたは、何を達成しようとしているの?
ということ。
例えば、あなたが今している仕事は何のため?何を達成しようとしているのですか?
そう聞かれてすぐに答えれますか?
きっと色々な目的が見えてくると思います。
・生活費が欲しいから
・親がうるさいから
・社会人として安心したいから
・野心を達成したいから
などなど
その目的は人によって様々ですので、モチベーションが違って見えたり、思考・判断が違っていたりするのです。
上記のように、脚本から役が何を達成したいのかを考えていくことから旅は始まります。
役の目的には大きく分けて3種類

役の目的は大きく分けて3種類あります。
- 人生での目的(物語全体での目的)
- シーンの中での目的
- ビートの中での目的
これは因数分解のように捉えてもらえると良いです。
人生での目的があり、そこに向かって行動しているからこそ、日常の出来事の中でもその目的に向かって人と接していたりするのです。
よくRPGのドラクエ(ドラゴンクエスト)に例えられます。
では、ドラクエの主役の勇者で考えてみましょう。
あなたが、勇者なら、その物語の中でのあなたの目的は、「魔王を倒して世界を平和にする」こと。
シーンの中の目的は、街を訪れて、色々な人と会話して情報を得る。
シーンの中で「魔王の情報を得る」という行動を取るのは、「魔王を倒して世界を平和にする」ための行動なのです。
大きな目的の中の小さな目的といったことですね。
また、ビートの目的というのは、さらに小分けした内容になります。
「魔王の情報を得る」という目的の中に、小分けしてみましょう。
街を訪れて、その街の人がなにやら怯えているとか、警戒しているかもしれません。
さて、どうやって行動すれば情報を得ることができるでしょうか?
そんな中、情報を得るためには、街の人を
「振り向かせる」
「村人の目を見る」
「味方だと思わせる」
といった小さな行動に分けていくことになります。
しかも、その小分けされた目的たちは、「魔王の情報を得る」ためであり、さらに大きな目的の「魔王を倒して世界を平和にする」ためなのです。
整理すると下記のようになります。
- 人生での目的(物語全体での目的)=「魔王を倒して世界を平和にする」
- シーンの中での目的=「魔王の情報を得る」
- ビートの中での目的=街の人を「振り向かせる」「村人の目を見る」「味方だと思わせる」など
役の超目的(スルーライン)とは?

人生での目的(物語での目的)とはどんなことでしょうか。
ドラクエの例えでほんのりでも想像できれば幸いです。
人生での目的(物語での目的)と言ったり、超目的とか、スルーライン、背骨といった言い方をします。
同じ知識を持てる監督や演出家と話せるのであれば、共通言語として相談できますよね。
色々な言い方を心得ておくと話しやすいと思います。
ちなみに私はスルーラインといった言い方を好んで使用しています。
ここで捉えて欲しい要素は、
スルーライン=「人生を賭けて手に入れたいもの」
という視点を持つことです。
そこまでして手に入れたいものとは?
脚本を分析して見つけていく必要があります。
一見矛盾した行動をしているように見えても、この「人生を賭けて手に入れたいもの」は普遍です。
つまり、スルーラインは物語の中で変わることはありません!
超目的(スルーライン)から一歩深い演技にいくための秘訣
超目的(スルーライン)から一歩深い演技にいくために、ゴッドファーザーの例を出しながら、スルーラインを考えるヒントをひとつお伝えします。
これはとても大事ですので、ここに記しておきます。
上記の内容のどちらかが恐らく、マイケル・コレリオーネのスルーラインです。
これは人生賭けて、ドンが死した後も、ずっとそこへ向かっています。
より役の人生を豊かにするためには、物語全体での目的よりも、そこから「人生を賭けて手に入れたいもの」を見つけることをおすすめします。
ドラクエの勇者でよく例えられますが、この例で考えてしまうと抜け穴があるのです。
スルーライン=「人生を賭けて手に入れたいもの」でしたよね?
勇者のスルーラインは、物語上は「魔王を倒して世界を平和にする」でした。
しかし、彼が「人生を賭けて手に入れたいもの」は、「魔王を倒して世界を平和にする」でしょうか?
それは何のためにそうしたいのでしょうか?
それを見つけて欲しいのです。
「誰にも脅かされずに家族と暮らしたい」といったことがスルーラインかもしれません。
「父親に認められたい」のかもしれません。
つまり、大義名分ではなく、個人的な目的があなたの心を生涯突き動かすという意味です。
自分ごととなるチョイスをしていければ心は動き出します。
目的に向かって行動するから心が動く!

目的を定めて行動することの何が「正」なのか。
その理由を、子どもをお風呂に入れるというシーンから考えてみましょう。
4歳児の子どもがいて、お風呂の時間なのに、遊びに夢中でなかなかお風呂に来ません。
4歳児あるあるのシーンですね笑
親であるあなたのシーンについて考えてみましょう。
目的:子どもをお風呂へ入れさせる(早くお風呂を終わらせる)
障害:子どもが嫌がる、おもちゃでまだ遊びたがっている、面倒だと思っている、お風呂嫌い
動機:お風呂に入れたあと、仕事の続きをしなければならない
といった内容になってくることは想像に難くないのではないでしょうか。
さらにビートで小分けすると
ビート1目的:遊びをやめさせる
ビート2目的:説得する
ビート3目的:怒られると思わせる
となるかもしれません。
我が家の体験談ですが笑、動機があって目的に向かっていますので、イライラするです。
私の動機は早く仕事を終わらせたいといったものがあるので、「早くお風呂を終わらせたい」のです。
そんな時のこの子どものグダグダは大いに心が乱されるのです。
逆に子どもの目的は、「遊びを自分の思うゴールまでクリアさせる」「パパを待たせる」
といったことかも知れません。
お互いの目的が違うので、その違いでのお互いの関わり合いが、お互いの心を自然に動かしてくれるのです。
いや、ほんと、スムーズに入ってくれる日がくるのを待っています笑
目的、障害、動機についてはこちらの「台詞に感情を乗せる?感情は込めるもの?台詞に自然な感情が出てくる方法」「エキストラのあなたも、俳優です。だから準備しよう役の目的を!」の記事をご参照ください。
まとめ

今回は、目的について具体的に記述してみました。
何となく思っていたことが、すっきりとした輪郭として見えてくれば幸いです。
こういった座学が俳優にはとても重要です。
このような目的や脚本分析の座学を経て、シーンを分析していけるようになれば、あなの演技そのものは変わっていきます。
実情、演技ワークショップとしてやっている実践的な中で、このような座学の時間を持てないことが多いのは非常に残念です。
腰を据えて、これを説明できるアクティング・コーチとぜひ出会ってください。
また、私と出会ったことも、ひとつの縁と思っていただけば、私も嬉しいことです。
(本当にそう思ってもらえたら嬉しいです!)
さて、目的に向かって行動すると言われてもどうしていいか分からないといった方々に出逢います。
そうなんです、目的に向かって行動することに慣れていない私たち。
基本的に能動的というよりは受動的教育で育ってきた人が多いのが実情。
クリエイティブな教育や行動をしてきた人は、これらが自然にできたりするのですが少数派です。
与えられて、それをクリアしたり消化したりして、ちょっと行動して与えられた中で受動的に生活されている習慣のままのライフスタイルの人が、実際に目的に向かって行動することは難しいのです。
だから、そこから練習や演技トレーニングをしていかなければ、行動できなかったりするということ。
現実では失敗することが怖いかもしれません。
しかしながら、演技では失敗してOKなのですから、生きる練習ですよね。
ぜひ、失敗を恐れずに、目的に向かって行動する経験を増やしていきましょう。
それがあなたの演技のリアリティを生みます。





























ゴッドファーザーのマイケル・コレリオーネ(アル・パチーノ)のスルーライン
・目的例1)父親(ゴッドファーザー:ドン・コレリオーネ)に喜んでもらいたい
・目的例2)父親(ゴッドファーザー:ドン・コレリオーネ)に認められたい